
たとえ形が無くなっても、無くならない大切なもの |
恋愛をすると、大切なものが増えていきます。
私の一番大切なものは、ある喫茶店のミルクティーです。
「もの」と呼べるかどうかは微妙ですが、私にとって思い出深いというのはたしかです。
その思い出とは、ある男性にデートに誘われたときのお話です。
気まずい空気を紛らわすようにミルクティーをかき混ぜ続ける私に、男性は優しい対応をしてくれました。
その時に飲んだミルクティーの味は鮮明に覚えていますが、それ以降、同じ優しい味わいを感じたことはありません。
大切なものというのは、それが手元に渡るまでの経緯がその人にとってかけがえの無い思い出だからこそ、宝物であるといえます。
二度と再現されることのないその思い出こそが、本当の宝物なのかもしれません。
ほろ甘い思い出
恋愛をすると大切な物が増えていきますよね。
みなさんは思い当たるもの、持っていますか?
私には、一番大切にしているものがありますよ。それは、ある喫茶店のミルクティーです。
「もの」と言ってよいかどうか微妙なところですが、私にとって思い出深いというのはたしかです。
その思い出というのは、ある男性にデートに誘われたときのお話です。
デートの当日、外は一面銀世界でした。天候が悪く、畳み掛けるように雪が降り積もり、道行く人々は粉砂糖をかぶったかのように見えました。
私は身も心も凍るような厳しい寒さの中、駅前の喫茶店へと向かいました。
待ち合わせの時間ぴったりに店内に入ると、約束をしていた男性はわざわざ入り口まで来て私を出迎えてくれました。
挨拶もそこそこに店の奥へと向かいます。
テーブルには飲みかけのグラスと既に空になったグラスが一つずつ置かれていました。
きっと随分前に到着して、私が来るのをずっと待っていてくれたのでしょう。
私はもともとミルクティーが好きで外食をする時はよく注文していたので、迷うことなくそれを注文しました。
運ばれてきたミルクティーは、カプチーノのようにミルクの泡がたっぷりと乗っているものです。
付属の砂糖を入れ、スプーンでかき混ぜます。
始終、男性の視線を感じていたため、緊張してなかなか口をつけられませんでした。
一言二言話しては沈黙が流れ、その度に私は手持ちぶさたな右手をスプーンに添えていました。
気まずさを紛らわすようにひたすらミルクティーをかき混ぜ続ける私を、その人はどんな気持ちで見つめていたのでしょうか。
それを何度か繰り返し、ようやく緊張の糸がほぐれた頃。
男性はおもむろに、テーブルに投げ出されていた私の左手に自身の右手をそっと重ねました。
弾かれたように顔を上げると、男性は少し笑みを浮かべて私を見ていました。
あからさまに緊張していたので、笑われても無理はないですよね。
物凄く恥ずかしくなって、表情を隠すために俯きがちにカップに口をつけました。
瞬間、広がったミルクの甘さと紅茶の香り。
その時の一口を今でも鮮明に覚えています。
温かい飲み物のおかげで火照った顔がさらに熱くなり、私は男性に見られまいとそのまま俯いていることしかできませんでした。
緊張しすぎですね。
けれども、男性慣れしていなかった当時の私にとっては、とても印象深い出来事だったのです。
今はその喫茶店に行くことは滅多にありません。
けれども、それ以降、ミルクティーは私の中で特別なものとなりました。
飲む度に、あの時の思い出が蘇ります。
ただ、どの一口もあの時のものとは違うので、不思議なものですね。
二度と味わえない宝物
今回は単なる私の思い出話になってしまいましたね。
執筆しながら、懐かしくもどこか胸の奥を締め付けられるような、そんな気分になりました。
デート以外のときにそのお店のミルクティーを飲んだこともあったのですが、やはりあの時のような優しい味わいは感じることができませんでした。
大切なものって、それが手元に渡るまでの経緯がその人にとってかけがえの無い思い出だからこそ、宝物であるといえるのですね。
形のあるものはいずれ壊れてしまいます。自然の摂理とはいえ、少し寂しいですね。
けれども、たとえもとあった姿が無くなってもそれがいつまでも心に留まり続けるのは、それにまつわる思い出がそれほど価値のあるものになっているからなのでしょう。
二度と再現されることのないその思い出こそが、本当の宝物なのかもしれませんね。
きっと、口には出さずとも、誰もがそういうものを心のどこかにしまっているのだと思います。
大切なもの、あなたは持っていますか?
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